元カフェ経営者の福井(@aomorio)です。
飲食店を開業してその1店舗目が軌道に乗ると、2店舗目の出店を考える飲食店経営者も多いことでしょう。
私の場合、1店舗目のオープンから1年10カ月後に2店舗目をオープンしました。自分で言うのも変ですが、2店舗目のオープンは非常に良い流れでできたと思っています。
現在は複数店舗経営するようになり、ある程度ノウハウも溜まってきました。そこで、これまで私が培った多店舗展開のポイントを皆さんにお伝えできればと思います。
自分が経験しながらやってきたことなので参考なるはずです!!
①多店舗展開する上で欠かせない「店長の育成」

店長の育成なくして、多店舗展開は不可能です。
多店舗展開すると経営者が1店舗あたりにかけられる時間が少なくなり、現場が見えなくなります。そこで各店舗に責任持って対応してくれる従業員が必要になります。
店長の必要性は、色んなブログや専門記事で言い古されていて月並みな言葉になってしまいますが、私自身も本当に必要だと考えています。
とは言え、これまで語られてきた店長必要論は「店長をしっかり育てよう」のような非常にあいまいな表現ばかり。実際、どこまで育てたら店長なのでしょうか?
飲食店経営者の誰もが考えることでありながら、店長に求めることは店それぞれ、経営者の考えそれぞれで違います。
例えば、大手チェーン店と客単価数万円のフレンチレストランの店長では、同じ店長という立場でも仕事の内容や求められることは違うはずです。
前者はマニュアル化されたオペレーションをきっちりこなす事が評価され、後者はマニュアルにはないような属人的なサービスや行動を要求されるでしょう。
これだけで1記事書けてしまうので、今度詳しく解説してみようと思います。
いずれにせよ、多店舗展開する上では店長の育成が必要不可欠です。
②1日、1週間、1カ月の「業務マニュアル」を作る

多店舗展開を成功させるためには、従業員に店を任せられる業務の仕組みが必要です。その仕組み化に欠かせないのが業務マニュアルです。
経営者は自分が認識してる以上に、無意識でやってる業務があります。それらを一つずつ棚卸しして言語化する必要があります。
業務を言語化したものが業務マニュアルです。マニュアルと言ってもガチガチに作り込んだものである必要はありません。1日の終わりにはコレをする、1週間ごとに、1カ月経ったら、のように区切りごとにやるべきことをリスト化するだけでOKです。
以下のように、箇条書きで問題有りません。(1日の業務マニュアル)
- 電気水道ガスの閉め忘れ確認
- レジにお金は残ってないか
- 掃除機はかけたか
- トイレ掃除、トイレットペーパーは補充したか
③店舗共通の「調理人マニュアル」「接客人マニュアル」を作成する

調理マニュアル、接客マニュアルではありません。調理”人”マニュアル、接客”人”マニュアルです。
英語でmanualとは手引きという意味です。日本語のマニュアルは型にはまるようなイメージですが、本来の意味は手引きなので参考書のようなイメージです。
なぜ調理マニュアル、接客マニュアルではないのか?
他店舗展開では、飲食店に従事する「人」としての心構えや指針が必要だからです。
調理・接客マニュアルは、調理工程や接客業務の中での個別具体的な行動に対しての指針です。これらは店長の業務レベルが問題なければOJTで十分にカバーできますし、調理工程であれば「○○を□□で3分」のように誰でも言語化・数値化して伝えることができます。
一方で、人としての心構えは、経営者→店長→他従業員と段階を踏んでいくと、一次情報である経営者の熱量や想いが薄れてしまいます。このように店長が言語化しにくい「考え・想い・方向性」は経営者自ら言語化すべきです。
マニュアル一冊があれば、アルバイトを採用したらまず最初に読んでもらうとか、従業員を集めて定期的に読み直しをすることで、考えや仕事のスタンスをアップデートすることができます。
参考までに、弊社マニュアルの一部を載せておきます。
- 美味しい料理は最高の舞台(調理場)から生まれます。
- 調理人は、料理提供のスピードがお店の評価に重大な影響を及ぼすということを認識し、最大の努力をします。
- どんなに忙しくても清掃を計画的に行います。
- 接客人は「演出家」兼「演技者」です。
- 私たちが提供しているのは有償の愛です。
- 『いらっしゃいませ』の言葉の3つの意味とは?
④「クレーム対応マニュアル」を作成する

飲食店を経営していく限り、お客様からのクレームは避けられません。
初めてクレームを受ける人とクレームに慣れた人ではお客様への対応が違ってきますし、逆にクレーム慣れした人は慣れてるばかりによろしくない対応をしてしまうこともあります。また、経営者が現場にいた時は自ら対応していたクレームも、多店舗展開をして現場を離れるとそうもいきません。
そこでクレーム対応マニュアルが必要になります。「クレームはどう対処すべきか?」をまとめた手引きは、多店舗展開をしてなくても、1店舗のうちから作っておくと自分がクレームを受けた際にも気持ちが楽になります。
弊社で作成したクレームマニュアルの一例を載せておきます。
- クレーム対応で最も大事なことは、お客様の気持を理解すること。
- お客様からのクレームを活かすには、原因を徹底的に究明すること。原因が究明されなければ同じクレームが発生する。
- お客様のお話することは最後まで真摯に耳を傾ける。
⑤多店舗展開の秘訣は「従業員を信頼する」

経営者は従業員を絶対的に信頼すべきです。
従業員に店を任せるようになると、彼らの働きぶりが見えなくなります。飲食店経営者が一番不安で、頭を悩ますところでしょう。でも彼らの業務に対して、一切の疑いを持ってはいけません。朝きっちり出勤して、営業中もしっかり仕事をこなし、店を閉めて帰ってくれる、そのことをまずは信じてください。
経営者が従業員を信頼しなければ、従業員も経営者を信用しません。信用がなければ関係が悪化して、内部から崩壊して多店舗展開は失敗します。
⑥店を任せるなら従業員に求める「業務レベル」を下げる

他店舗展開して経営者の目から店が離れると、よほど優秀な店長がいるか、完璧なマニュアルが存在しない限り、店のレベルは落ちてしまいます。
これは従業員が悪いのではありません。今まで経営者の仕事ができ過ぎたことが原因です。
「自分の分身がいれば…」なんて言葉をよく聞きますが、そんなことを言ってる経営者はハッキリ言って三流です。
自分の分身を作るかのように、自分の仕事レベルを従業員に求めることが間違いだと認識すべきです。
だからと言って、質を落とすという意味ではありません。どこまでできれば合格点なのか、落とし所を見つけるということです。
⑦多店舗展開をするなら「就業規則」の整備は必須

店の秩序を保つためには、経営者と従業員とで明文化されたルール(就業規則)が必要です。「従業員を信用する=従業員に好きにやらせる」という意味ではありません。
例えば、小学校から高校まで秩序を保っていた学生が、大学や専門学校に進学した途端に、授業中に食事したりスマホをいじったりするようになります。これは大人になったから許されてたのではなく、校則という明文化されたルールがほとんど存在しないからです。
ルールがなければ個々のモラルが行動基準になり、モラルは人それぞれ違うためトラブルが発生しやすくなります。
また、就業規則という明文化されたルールは、従業員が守るべきことだけではなく、経営者も就業規則に則った判断をしなければなりません。
よくある話です。このような場合であっても、
- 遅刻1回目なら口頭注意
- 2回目は始末書
- 3回目は減給処分
- 常習化するようであれば出勤停止や解雇も可能
このように就業規則で明文化していたらどうでしょうか。公平な判断なので問題が大きくなることはないはずです。
明確なルールを定めることは、従業員を縛るものではなく、経営者と従業員の双方が納得した形で物事を進めるために存在しています。
現実問題として、小さな飲食店は就業規則がないところが多く、問題があれば経営者がその都度判断している場合が多いでしょう。経営者の頭の中にルールがあり、従業員はそれに従うのみ。日本ならではの暗黙のルールです。毎日顔を合わせる関係ならまだ何とかなるかもしれませんが、多店舗展開するとそうはいきません。
明確なルール(就業規則)を定め、いかに秩序のある組織を作れるかがポイントになってきます。
⑧多店舗展開には従業員の働き方を管理する「労務管理システム」の導入が必要

就業規則を定めたら、それを管理するシステムが必要になります。その一つが労務管理システムです。
- いつ出勤したか?
- 休憩はきっちり取ってるか?
- 時間通りに退勤してるか?
- 残業はどれだけしてるか?
多店舗展開して現場に出なくなると、従業員の1日の働き方が見えなくなります。就業規則でルールは定めたけど、ルール通りに働いてるかがチェックできない、そんな状態です。
そこで労務管理システムの導入です。今はとても良い時代で、低コストで導入できるシステムがたくさんあります。
オススメはリクルートが提供している無料POSレジアプリ「Airレジ」が提供しているAirシフトです。
リアルタイムで出退勤の管理ができるので「◯◯さん、最近残業が多いけど大丈夫かな?」とケアすることもできるようになります。
⑨お金を管理するルールを作る

飲食店は現金商売なので、お金を管理するルールが必要不可欠です。
他店舗展開して人数が多くなると、目の前のお金にどうしても心が揺らいでしまう人が出てきます。1万円くらい抜いてもいいかな…と。それが実際に起きてしまったら、経営者とその人の問題だけではなく周りの従業員にとっても悲しい出来事になります。そうならないためにお金のルールが必要です。
お金のルールと言っても、お金の目的ごとに分けて管理するだけOKです。だいたいはこの4種類で十分でしょう。
- 釣り銭準備金
- 両替金
- 売上金
- 小口現金
釣り銭準備金は、営業開始前に予めレジの中に準備しておくお金です。毎日金額と金種(千円とか100円とか)を変動させるのではなく固定にすべきです。
両替金は、釣り銭準備金の両替のためにストックしておくお金です。金額は固定、金種はバラバラで構いません。
釣り銭準備金と両替金は毎日数えて、1円たりともズレてはいけません。
売上金は、毎日の営業で得られるお金です。営業終了後に「レジの中にあるお金ー釣り銭準備金」で算出することができます。原則、前日の売上金は翌日には銀行口座に入金すべきです。店舗にはできるだけお金を置かない、これが金銭トラブルにならない秘訣です。
最後は小口現金。用途は買い出しです。予想以上に売れてしまって材料がなくなることもあり、どうしても買い物用のお金が必要になります。この管理がなかなかやっかいです(笑)小口現金出納帳とセットで管理することをオススメします。
⑩従業員の人間関係に気をつかう

最後は、人間関係についてです。
多店舗展開すると従業員が多くなり、人が多くなると人間関係のもつれが出てきます。これは仕方ないと割り切ってください。大なり小なり、人には好き嫌いがあるのでトラブルは起きます。
ぶっちゃけ、人間関係の根本的な解決はほぼ不可能です。トラブルが発生した時に経営者が間を持って、とりあえずその場はチャンチャンにしても、人間、そう簡単に変わることはできません。他人なら尚更、変えることはできません。
ポイントは、常にケアをするということです。
あの人たち最近仲が悪そうだなぁ、、と思ったら「最近どう?」と声をかけるだけでもいいです。従業員の心の中にあるモヤッとした気持ちを引き出してあげて楽にしてあげましょう。
もちろん就業規則(ルール)に反した行動があり、そこからトラブルに発展したなら注意しなければなりません。時には解雇という厳しい選択も必要です。
繰り返しますが、人間関係の根本的な解決はほぼ不可能です。だからこそ、従業員の小さなモヤモヤを解決してあげなければなりません。店舗数が多くなれば社長一人では無理なので、店長やマネージャーがその役割を担うことになるでしょう。
まとめ
気持ち込めて書いたらめちゃくちゃ文章が長くなりました。
現在多店舗展開で悩んでいる経営者の方も、これから多店舗展開を考えている方も、この10個のポイントを参考にして、ご自身のお店の店舗展開に取り組んでいただけたらと思います。
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